楽しいカオスを作るのは、楽じゃない

リバプールFCに狂い、サラブレッドを愛し一口馬主で悪戦苦闘するオタクが、今世のカオスに身を沈めながら「みんなもこっちに来いよ」と足を引っ張りたがるブログ

幼魚と逆罰→固陋蠢愚 呪術廻戦 25話 感想。

呪術廻戦がとにかく面白いからみんな読んでみてくれ! - 楽しいカオスを作るのは、楽じゃない

 

『呪術廻戦』週刊少年ジャンプ公式PV - YouTube

 

さあどうなる!?

という不穏すぎる前週の引きからいきなり1ページ目でこれですわ

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無慈悲すぎてさすがに固まるよね

 

そしてここでサブタイトルも変更。

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固陋蠢愚とは?

また珍しい言葉持ってきたなと

読み方, ころうしゅんぐ. 意味, 他人の意見を聞くことなく、視野が狭いために、柔軟で適性な判断が出来ないこと。 「固陋」は他人の考えを聞かず、視野が狭いこと。 「蠢愚は愚かで知識がないこと。 

 

ぐぬぬ……ツライ……

 

呪術廻戦 25話 感想

さて、本編は上記の「里桜高校の事件」からスタート。

僕が「おっ」と思ったのはまず主人公サイドの描写から始めたこと。

普通は吉野の動きから始めるのが大半だろうけど、あえてこの虎杖と七海の対話からとしたのは芥見先生らしい構成の妙というか、今週の最後まで読むと意図が良く理解できる。

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仲間(七海)が生き死にをかけて戦うのに自分はまだ子供だからと遠ざけられてしまう。そんなのはごめんだと虎杖。

そうだね。そういう呪いのもとに生きているんだもんね虎杖は。

でも単純に「まだ早い」という大人による大人らしい論理で戒める七海。

「子供であるということは決して罪ではない」

というセリフはこれから起きる吉野順平の事件に対しても重くのしかかってくるね。

 

呪いに染まった吉野順平はどうなる?

場面が変わり、今度は吉野。

『嗅ぎ慣れた朝の空気も

見慣れた通学路も

今日は』

(この、今日はで切ったところ痺れた。)

遂に彼の世界が変わった瞬間。

もちろん母の死は響きに響いただろうが、決定的に背中を押したのはやはり呪霊、真人の悪意。

 

 

決意を固めた吉野は生徒が集まった体育館へ突入しその場にいた生徒たちを昏倒させる。

目的は大きく分けて2つだろうか。

1つは担任の教師に真実と現実を突きつけ己の無能さを自覚させて「罰」を与えること。

学内における吉野順平を取り巻く状況に何も気づけず、それどころかいじめの実態に対してあまりにも都合よく理解している気でいた『何も見えていなかった教師への』

傷跡を見せつけながらの「先生、ちゃんと見ててね」

にはまたも痺れた。

前髪でずっと隠していたおでこのタバコを押し付けられたような複数の傷跡を見せつけられて、さすがに教師も察した模様。

そしてさりげなく挿入されるセリフ

「これまでのことも、これからのことも」

から吉野の心内が少し垣間見えてグッとくる。

 

もう1つの目的。それが吉野へのいじめのバックにもいたり(おそらく)

この学校のヒエラルキー頂点にいる存在だと思われるしょーた先輩に「罰」を与えること。

真人の誘導で吉野はこいつが家に宿儺の指を置いたのかもしれないなんて風にも考えている。ただこれはあくまでも吉野が実際にこういった行動を起こすまでのトリガーに過ぎなかったし『体のいい理由が用意された』というだけ。

そう。以前真人は語っていたね。「人間は言い訳をしないと生きていけないからね」って。

そして同じ場面で吉野もこんなことを言っていた。ほんとツライ。

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あえてステレオタイプな軽薄小悪党高校生として先輩が描かれることで吉野の

「オマエは死ぬんだよ質問の答えがイエスでもノーでも」や

いたぶりながらの「で?」「だから?」等からも伝わるように『こいつ自体はわりとどうでもいい』という風に描写されてもいる。(これ今後の事件の展開を考えると結構大事だと思う)

 

さあ、そんな場面に駆け付けた主人公、虎杖が叫ぶ。

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「何してんだよ!! 順平!!!」

「引っこんでろよ、呪術師」

 

この呼び方の対比での引きはあまりにも悲しいよ。

 

今週は虎杖を戒め、死と距離を置かせようとする七海の「子供であるということは決して罪ではない」

ここぞとばかりに吉野をけしかける真人の「愚かな子供(ガキ)が死ぬ所は」 

といいもうね。ずっと痺れてたよねw

しかしよくもまあ週刊連載でネームや演出構成も含めここまでこだわり抜いた漫画が描けるもんだ。この若さで。末恐ろしい。

 

まとめと、「固陋蠢愚」今後の展開予想

とにかく徹底的な対比構造でマンガを構成して魅せていく形をとっていて、ここまでのすべてのエピソードと各キャラクターの属性と配置も練りに練られていることがよく理解できてもう唸るしかない

細やかなセリフの一つ一つにも明らかに意図が込められているし、そこも徹底的な対比構造を構成する大きな要因にもなっている

すべてを拾うのはたぶん無理だけど、たとえば今週の最新話に引っかかる部分だけで抜粋してもどれだけあるやら。

 

 

特に、幼魚と逆罰というサブタイトルへのアンサーとして表現された部分で、

幼魚と逆罰 → 先週の母親が語った水槽のくだり(ここから水槽の中の幼魚としての吉野順平を連想させ) → 今週の吉野が起こした行動によって、逆罰(さかばち)が自分が入っていた学校という小さな水槽をひっくり返す(逆鉢=さかばち)みたいな解釈もできるように仕掛けられていたり。

もしくはそれまでの自分(幼魚)で居させてくれた母との生活が真人についていった事で逆罰(さかばち)を受けひっくり返って(逆鉢=さかばち)割られ、世界が変わってしまった。なんて解釈とか。

でもこんな連想ができる事によってある種の救いの可能性にも考えが及び、例えば

水槽のくだりから、小さな水槽をひっくり返した事によりその枠から解放され、むしろもっと大きな世界と関わるキッカケとなり、そこで出会えた虎杖の手によって違う生き方と価値観を得られるというような可能性すら生じている。

ここでも見事な対比構造が継続累進されていて

秤を維持する唯一絶対の価値観だった母を失い、一見グチャっと壊れてしまったようでも

呪い(のろい) ≒ 力を得た自分 ≒ 呪い(まじない)

(のろい)真人 ≒ 吉野順平 ≒ (まじない)虎杖

という広義での関係性は継続されているので、まだ、順平がどういう形で処理されるのか、わからない、はず……

とはいえ

何がツライって、順平のここまでの行動の流れが完全に呪霊サイドからコントロールされたものであるというところ。

映画館の事件から吉野がついてきたこと自体は偶然であっても、協会・高専から人を引っ張り出すためにそのまま泳がせて結果真人は実戦もこなせつつ、なんと高専側から虎杖を引く。からの夏油の「大当たり」発言で、また手を広げて宿儺の指まで利用しつつの大掛かりな計画になっていったわけですな。

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ハロウィンへ向けて呪霊側も巧妙に狡猾にしっかり動けておりますなあ。

ほんとよくできた構成だ。感心するしかない。

夏油が宿儺の指まで出してきて、しかもあえて高専に回収させた理由はなんだろうね?

 

吉野にはなんとか救いがあってほしいが、果たしてどうなる……

虎杖は今任務で事実上初めて呪術師として呪われた人間と相対するわけで、ここで下手な結果にするとはメタ的に考えちゃうと思えないのだけれど

例えばかつて伏黒が己の価値観に真っすぐに純粋な感情論に任せて虎杖を生かしたように、そういう救いがあってもいいのでは? とまで考えてから、

「あれだけ対比描写された虎杖と伏黒が同じ結果を生み出すわけがないのでは?」

という無情なゴーストの囁きを受け取ってしまった。ツライ。

 

やっぱここらで宿儺さんに出番ありそうなんだよなあ。

 

さてさて、僕はそれでも吉野順平は味方サイドに仲間入りすることになると思っている。ていうかそう思いたいもん。

という観点から気になったのが、彼自身はまだ根源となる呪いを受けたわけでは無くね? ってところ。

要するにまだ幼魚として周囲から揺らされて右往左往しているだけなんだよね。

今週は吹っ切れたようでいて、その実ただ殻になってるだけだもんよ。

ある意味全てがどうでもよくなってしまっているだけ。

仮にころされて終わるだけならこれでいいのかもしれないが。

 

虎杖には「オマエは強いから人を助けろ」「大勢に囲まれて死ね」という祖父からの遺言という形での強烈な呪いがかかっている。

伏黒の言動にも大事な人からの影響で強力な価値観の呪いがかかっていることが呪胎戴天での回想から伺える。

ここまである意味どの主要キャラクター達よりも詳細が描かれてきた吉野にもあってしかるべきなんじゃないのこういうの。みたいな気持ちがある。

母の死に関する部分で何か持ってくるのかなと考えていたけどこれだしね。

暴走してはいても未だ幼魚として域を脱せてはいない吉野にとっての呪い足り得る事象って、真人からの「俺は順平の全てを肯定するよ」と虎杖から受けた命の価値観くらいなんよな。

結局まだ誰も殺してなかったりするし、天秤がまだ傾き切っていないのは間違いない。

虎杖にはここらで主人公らしくガッツリ引っ張り戻してほしい。